戦乙女と紅~東方同盟の章~
獅子王は続けた。

「戦女神の化身…だったか?己の戦が、全て聖戦とでも言いたげな二つ名だ。大国との戦の折には、その名で騎士達を煽動し、理想を掲げて躍らせたか?己の両親の復讐の為に」

「な…!!」

獅子王の暴言に、私は言葉を失う。

「貴様の理想や綺麗事は、我が国にも及んでいる…復讐が目的でありながら、騎士や国民を欺き、自らの手足として操る。兵士の命を尊びながら、一方で戦を続ける偽善…成程、大したヴァルキリーぶりだ」

「……」

私の背後で、紅が槍を握り締める気配がした。

私はそれを手の合図だけで制する。

「貴様との同盟、受けてやらんでもない。だが俺は俺の独自の判断で動かせてもらう。貴様の戯言に惑わされて、我が国の兵まで凛々しき戦乙女様の犠牲となってはかなわんからな」

彼はこれ以上言う事はない、とばかりに立ち上がり、最後に一言。







「そのような理想など、俺はとうの昔に捨てたわ」






そんな言葉を残して、その場を去っていった。












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