戦乙女と紅~東方同盟の章~
紅に頼み込み、私は王宮を降りて戦場に向かった。

彼の背中から下り、声を振り絞って叫ぶ。

「やめろ!戦いをやめろ!!」

だが、疲れきった体から絞り出される声はかすれ、兵士達の耳に届く事はない。

「やめろ!!何故戦う!!味方同士だろう!!争うのをやめろ!!」

声の限りに叫ぶ。

喉が潰れても構わない。

もう二度と声が出せなくなってもいい。

全身の力を振り絞り、叫ぶ。

しかし、やはり兵士達の耳には届かない。

怒声に、悲鳴に、断末魔に。

様々な声にかき消され、私の声は届かない。

「やめろ!!やめるのだ!!戦うな!!殺しあうな!!」

叫ぶ。

どうにかして伝えようと叫ぶ。

伝わらなくて涙がこぼれた。

散々罪を突きつけられ、もう枯れ果てたと思っていたのに、この瞳からはまだ涙がこぼれた。

「がはあっ!!」

獅子王軍の兵士が、私の目の前で血まみれになって倒れた。

…何かを掴もうとするかのように、血にまみれた手を天へと伸ばし。

「…!!」

そのまま、その手は力なく地面に落ちた。

「ああ…あぁああぁ…」

その姿を見て、また涙が溢れ出した。

思わず膝から崩れ落ちてしまう。

「お願いだ…戦いをやめてくれ…」

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