戦乙女と紅~東方同盟の章~
やがて力尽き、私は立ち止まって息を乱す。

…ようやく呼吸が整ってきたところで。

「何故争うのだ!!」

私は叫んだ。

「私はこんな事を望んで同盟を結んだ訳ではない!!せめて東方だけでも…せめて隣人だけでも手を取り合って平和に過ごしたい、そう思って同盟を結んだというのに…」

また、涙が溢れてきた。

「何故血を流したがるのだ!!!!」

私の嗚咽だけが、静まり返った戦場に響く。

それを聞きながら、兵士達はただ俯いていた。

しかし。

「また始まったな、貴様の茶番が」

私を罵る声。

…それは、戦場に下りてきた獅子王だった。

「あれだけ断罪してやって、少しは己の罪を悔いる気になったと思っていたが…全く反省の色はないようだな。またそんな綺麗事を並べおって」

「…っ…」

私は獅子王の顔を見られず、ただ黙って唇を噛む。

その時だった。

「ほう、綺麗事と言ったな」









そんな言葉を発したのは、紅だった。










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