甘美な蜜のプワゾン
「そっか……分かった。うん、普通の恋頑張って」

「ごめんな……本当に」

皮肉って言った言葉にも隼人は何度も謝り、気まずそうにその場を離れて行った。

学園の広い中庭。

そこは手入れの行き届いたガーデン。
色とりどりな花が咲き乱れ、ローズアーチは素晴らしいものがあった。

おとぎの国のようなこの場所で、告白をすれば成就するという噂があったが、やはりそれはまやかしに過ぎなかった。

だって……秒殺はないだろう。
蘭の目からは涙も出なかった。

「ねぇ、普通の恋って何?」

不意に掛かった低い美声に、蘭の肩はビクリと跳ねた。

「だ、誰!?」

蘭は必死に辺りを見渡した。

後ろを振り向いた時、そこにはピンクの花たちが囲う芝生の上で、仰臥(ぎょうが)している男子生徒が一人いるのが見えた。

蘭は一気に血の気が引いていく感覚がした。

(ウソ……聞かれた……!?)
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