ヴァンタン・二十歳の誕生日
 (私なんて情けないことを。なんて無責任なを)

皆のために戦おうと誓いを立てたばかりなのに……


(何遣ってるの? 何で逃げ出したの?) 

私は自分自身に腹を立てていた。


もう一度パワーを貰おうとチビを見た。


操舵室では三人で戦っていた。


現実と異空間。
その間で家族三人?
肩を寄せ合って取り囲まれた骸骨と向かい合う。


(えっ!? 三人?)

其処に居たのは、フェンシング会場にいた人物……

雅のお兄さんだった。


その格好良さが、再び恋心を目覚めさせていた。


(何故今まで忘れていたのだろう? 大切な仲間だったのに……)

彼と私はパパの弟子だったのだ。




 そして私は覚悟を決め、腕を伸ばしてサーベルを高く掲げた。


(この光景……そうだ、あの日鏡の中で確かに見た……チビが見た……チビだった私が見たものは……)

十年前に確かに私は見たのだ。


(そうだやっと思い出した! 私の正体……を)

それは伝説の聖女の姿だった。




 チビが目を丸くした。

雅のお兄さんも驚きを隠せないようだった。


(間違いない!)

私は更に剣を高く掲げた。


その時私は満月の光に照らされた甲板に、剣を高く掲げた自分のオーラを見た。


(違う! オーラじゃない! 守護神だ!)


その時私は理解した。
その守護神こそ、本当の姉なんだと。


(エイミー姉さんこそが伝説の聖女の生まれ変わりだったんだ! そうか……だから殺されたんだ! 今此処にいる邪悪な生き物に……だから私も狙われたのか?)




 母のせいではない。

父のせいでもない。

全ては姉を闇に葬り去ろうとした邪悪なものの仕業なのだろう。


その時私は見た。
チビのポニーテールのリボンを……


(あれっ!? 確か私の髪に結んだ筈?)


私は慌てて自分のポニーテールを手を持って行った。


私は自分の手でリボンを確認した。


(そうか!? きっとこれはエイミー姉さんのリボン! ありがとうエイミー姉さん! 私負けない! 彼と共に戻るのためにも……)


私はもう一度サーベルを高く突き上げた。


あのガラスケースの中にあった、チビとお揃いのリボン。
それが今……
私のポニーテールと一緒に揺れていた。




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