ヴァンタン・二十歳の誕生日
 私の血が……、割れた鏡を再生する?

私は知っていた。
本当に知っていたのか?

だから……
だから……

ヴァージンなのか?

だから……
だから……

女子会オンリーだったのか?

だから
だから

大人になりたくなかったのか?

だから……
だから……
恋しいあの人まで封印したのか?

思い出せないように、心に鍵を掛けて……


だから……
だから……
パパの記憶さえも置き去りにしていたのか?

だから……
だから……
子供のままでいなければならない。そう思い込んでいたのか?


(そうだ全てはこの時の為に! 雅……私、本当に貴女のお兄さんが好きだったのよ。だから……必ず一緒に戻るね。お兄さんを必ず雅の元へ連れて帰るからね)




 私は決意する。
だから此処に居る……


合わせ鏡とコラボして現れた魔法の鏡。


目の前の鏡に……
ひび割れた鏡に……
私の血を捧げる為に。




 (お願い甦って! お願い家に返して!)

私は自ら掌を切り、写し出された鏡に擦った。

そして一心不乱に鏡に祈りを捧げた。




 気付いたらパパが傍にいた。

あの人も……
チビも其処にいた。


パパは私の傷付いた掌にそっとハンカチを当ててくれた。


こんなにも優しいパパの記憶を無くしていた私。

もう我慢出来なかった。

私は暖かいパパの手を掴んで逃げ出した。


(この手の温もりは……そう、皆生きていると言う証拠だ)

だから、私の流した血は決して無駄ではない。

パパを助けることが出来るかも知れないから。




 もう一度サーベルを手にする。

行く手を遮るキャプテンバッドと戦う為に。


「マルシェ!」


「ロンペ!」

俄か戦士だと思う。
でも誰よりも熱いハートで溢れている。


(パパのために! チビのために! 母のために! パパを助けに来てくれたあの人のために! そして何より、エイミー姉さんのために!)




 迫り来る骸骨。
パパはサーベルを構えて私を守ろうとしている。


私は泣き虫だった……
私は弱虫だった……
パパは思い出に残る私しか、子供のままの私しか知らない。


果たして私は弱いままなのか?


私は自問自答を繰り返しながら又サーベルをフレンチに握った。




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