MOONLIGHT【番外編~ウエディング、新婚旅行!?編】


扉の前で待っていたレイは。

息をのむほど美しかった…。


「お父さん、遅い。」


でも、口から出るのは不機嫌な声。

多分、照れくさいんだろう。


「…レイ。綺麗だ。」

「そりゃ、どうも。」

「…レイ。おめでとう。」

「はい、ありがと。」

「…レイ。幸せになれ。」

「わかってる。」

「…レイ。欲しい物があったら何でもかってやる。」

「ないし、そんなもの。」

「…レイ。嫌になったら、いつでも別れろ。それで、俺のところで暮らせばいい。」

「めでたい日に、縁起でもないこと言うな。」

「レイ…。レイ……。」


俺が感極まって、涙をこらえられなくなったら、レイが大きなため息をついた。

そして、不機嫌に顔をそむけた。


あ、うっとおしいと思われたか…?

そうだよな、こんな泣いてばっかりじゃ、がっかりだよな…。


そう思って、がっくりうなだれたが。


よく見ると顔をそむけたレイの頬が赤い?


「……別に将と別れなくても、実家に帰っていいんでしょ?…つまり里帰りってやつ。典幸こき使って、私ゆっくりできるし。ちょくちょく帰るから…。で……なんだ、えっと…いままで意地張って、我儘勝手ばかりしてたけど…そ、そ、そ、育ててくれてありがとう…お父さん。これからも、元気で…お母さんの分まで長生きしてよ…。」


そ、そんなことっ!!

今言うなんて反則だーーー。

もう、もう、涙が…。


『いつまでも、グダグダ泣いてやがると、ヤキ入れっぞ。あぁ″っ!?』


頭の中で、美景の若い頃にとった杵柄の巻き舌、ヤンキー口調が響き渡った。


美景は、やるといったらやる女だ。

現に、中川が女性に対して再起不能になったらしいし…。

あまりの恐ろしさに、一瞬にして俺の涙は引っ込んだ。


その瞬間、厳粛な曲が流れ、扉が動いた。

気がつけば、レイの手が俺の腕に絡まっていた。


扉が開いて、温かな拍手と、ライトが俺とレイを迎えてくれた。


そして。


『辛気くせー顔すんな!シャキッとしろ!!』


もう一度、巻き舌が頭の中で響いた。



相変わらず、美景は恐い…。




はあぁ。






< 38 / 113 >

この作品をシェア

pagetop