時わたりatラブ（仮）
奇兵隊のところから少し走り、馬に乗って新潟の新撰組の屯所を目指す。
懐かしく感じる屯所の近くに行くと、門番をしている十伍の顔が見えた。
十「らんさん！大変なんです、幹部の方達が会議してるんでそれまで戦支度をしてろ、と命令がでて。」
馬から降りながら、十伍に状況を説明してもらう
ら「もう幕府から御達しが来てるの？」
十「あぁ、高杉が正式に和平を断る書面を出したから。」
ら「分かった、ありがとう、十伍！」
十伍に馬を預けて急いで廊下を走ると、土方が急いでこっちに来るのが見える。
土「らん！」
ら「土方！どうなってるの？良く分からないできてしまったから。」
土「兎に角、幹部を集めたから会議だ。斎藤と局長は出かけてるからな。」
沖「二人とも、中に入ってください。」
突然の高杉さんの動きにてんやわんやな隊士たちとまだ状況が分からない幹部隊士。
新撰組には高杉さん達奇兵隊が、新潟撤退をし一旦長州へ戻り徹底抗戦の姿勢を取る、という書面を幕府に提出し和平はまだ成らないという知らせが届いたという。
ら「じゃあまた戦に？！
原「おう、久々だな！」
ら「そうだけど…。」
戦に張り切ってるみんなとイマイチ気分の乗らない私がいる。高杉だからって私情を挟むつもりはない、けど…。
土「いまは幕府の指示を待つしかないだろ？高杉だって馬鹿じゃねぇんだから、すぐに仕掛けてくる事はないだろ。」
ら「うん…」
沖「まあまあ、任務お疲れさまでした！ゆっくり休んでください。」
皆の労いの言葉でどんどん情けなくなってくる。
ら「高杉さん、殺されるかもしれない？」
土「戦に負ければ、な。」
一瞬でもこの戦をやめたい、とか言いそうになってしまう。
そんなこと言うもんか！
ら「とりあえず、お風呂入ってくる。」
藤「いってらっしゃい、らんちゃん。」
みんなの優しい顔でまた泣きそうになった。
ら「うん。」
持ってきた荷物を置いて廊下に出ると、悔しさが溢れてくる。
なんで昨日呑んでたんだろ…
あれってやっぱり高杉が私も泥酔させようとして？
でもなんで、そんなことする必要があったんだろう。
説得して無理だったら、高杉さんに私が付いてくとでも思ったのかな…、いや私ならそうしてたかもしれない。
ら「はぁ…なにやってんだよ、自分。」
男子入るべからず
の札がかかったお風呂につかって思わず大きくため息をついた。
土方サイド
土「らん、心あらずって感じだったな…。」
沖「仕方ないでしょう、暫く接してた人が何も言わずに戦をすると居なくなってしまったんですから。」
らんが風呂に入ったあと幹部でこれからの事を話す。
まあ基本、上に従うだけだけどな…。
原「らんちゃんをお目付けにしたのある意味、らんちゃんにとっては酷な事になってしまったな。」
今となっては、数ヶ月前の俺を殴りてぇ位だ。
新撰組も、高杉がまさか和平に反対して抗戦するだなんてほぼ無いものと思っていたもんだから、近藤さんも急いで会議に向かったし…
また忙しくなるな。
そう思うとついため息が出る。
土「はぁ〜。」
原「らんちゃん浮気したのかな〜。」
土「は！？」
部屋がシーンと静かになったと思ったら左之助からとんでもねぇ発言が聞こえたんだが！？
待て待て！
なんでそうなりやがる！
沖「それはないでしょう！」
土「あ、あぁ…らんに限ってそれはねぇだろ。」
藤「土方さん動揺してるのばればれですよ。」
永「んな事はいいんだよ、これからどうするんだ。また戦になるのは明確だろ？それにらんちゃん加えるのか否か。」
土「そうだな…それがあった。俺はらんの意思を尊重したいと思うが、副長としては私情を挟まれる訳にはいかねぇからな。」
沖「私は反対です、だって高杉さんは万に一つも勝つ見込みがないぐらいなんですよ。それに私情を挟まれてしまったら、らんさんが傷つくのは必至じゃないですか。」
藤「うーん…そうかなぁ。らんちゃんが私情を挟むほど弱いこじゃないと思うし。らんちゃん次第だと思うけど。」
らんなら戦に出るって言うだろ絶対。でもそれでまた死にかけたりする様な事があったらどうする。
原「じゃあ、らんちゃんに戦の前線にはでて貰わないで特別隊の任務で情報収集とかしてもらえばいいんじゃねぇ？」
土「あぁ、そうするか。それであいつが納得するならな。」
そう言って茶を飲もうとすると
ガサッ
と手に紙の様な質感がつたわる。
土「あ？なんだこれ。」
後ろを振り向くと、らんが奇兵隊から持ってきた荷物が目に入る。
沖「どうしたんですか？」
土「いや、紙の感覚がしてな。」
普段なら気にしないがなんだかひっかかるもんだから、らんの荷物を解いてみる。
原「なんだ土方さん、らんの荷物なんてあさってよ〜。」
風呂敷を解くと向こうで来てたであろう羽織やら、手習いの本やらが出てくる。
土「あった。」
その中でらんの持って行った袴があって綺麗にたたんであるが…
パッパッと袴を叩くと文らしきものが出てくる。
沖「え、文…ですか？」
土「あぁ…差出人はた、高杉！？」
永「らんちゃん呼んでそうか？」
土「いや、まだよんでねぇやつだろ。」
そう言って文をあけて読み始める。
【戦をすることに決めた、と面と向かって言ったら殺さんばかりの勢いでお前に止められるだろうと思って、宴会でわざと強い酒を呑ませてしまった事、すまなかった。
何度も和平に賛成をしようと、文を書いた。お前が戦のない世の中の事を話して、それが出来たらどんなにいいだろうと思う。
だが、俺はあいつらの無念を晴らさなければ新時代を迎える気にはならない。不甲斐ない大将の所為で死んでった奴らを忘れてのうのうと生きる事はできねぇんだ。
だから新しい平和な世の中は新撰組をはじめとした奴らと作ってけ。
言っとくが俺が死んだとしても自分を責める事はしない様に。あと戦には来るんじゃねぇぞ、デカかろうが女ってだけで狙われんだから。
さっさと俺の事は忘れて能天気に生きろ。
もし、また会えたら祇園で呑もうな、新撰組も一緒に。
高杉】
土「おいおい、本当かよ…。」
沖「なんて書いてあったんですか！？」
原「恋文か！？」
永「馬鹿！ちげぇだろ！」
土「あ〜、恋文の方がマシだ。これ、遺書みてぇなもんだろ。なんで、こんなもんをらんに残しやがる。」
俺には高杉がなんでこれをらんに託したのかさっぱりわからねぇ。
こんなもん受け取ったら余計に色々考えちまうだろ！
土「これはらんに渡せねぇな。」
藤「俺も渡さない方がいいと思う。」
土「やっぱり、高杉がらんに戦にでるなって意味で書いたんだろうな。らんはこの戦の前線に行かせらんねぇ。」
そういって立ち上がると近藤さんが帰ってきたらもう一度伝えると、俺も部屋に戻った。
土方サイド終わり
