鈴芽 ~幸せのカタチ~
イチローの目がゆっくり開く。

かすかに動く私の左手に気づき、
すぐに私の顔を見た。

イチローの優しい目と私の目が合う。

『イチロー』

声になっていたかどうかはわからない。

でも次の瞬間イチローの目には
涙が溢れていた。

『スズメ!スズメ!』

イチローの泣く姿は初めて見た。

イチローは私を抱きしめ、まだ泣いている
みたいだった。

イチローの大きな体の重みを私は確かに感じ、
生きているんだと思った。
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