薬指の約束は社内秘で
それくらい私は、葛城さんのことを――……

霧が晴れていくように鮮明になる想い。

首筋に触れる指先のあたたかさに、私を見下ろす優しい瞳に、気付いたばかりの想いが溢れそうになる。

長く息をついて気持ちを落ち着かせた。


「葛城さんのせいじゃないです。なんか体が勝手に動いて――」

いま出来る精一杯の明るい声に、彼の瞳が大きく揺れる。


だから、気にしないでください。

そう続けようとした言葉は――……

何か聞き取れないほどの小さな呟きに遮られ、強く左腕を引かれた次の瞬間。

温かい腕に包み込まれていた。
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