薬指の約束は社内秘で
とりあえず落ち着こう。

心にそう言い聞かせ一度座り直そうとベッドに手をつくと、右手が葛城さんの手と触れてしまう。

慌てて距離を取ろうとしたら、そのまま顔を寄せられる。それまでとは違う真剣な瞳が私を見つめた。

「簡単に信じたりするから、騙されたり裏切られたりするんだ」

騙されたのは私なのに、どうしてだろう。

揺れ動く瞳に暗い影が差したように見えた。彼が酷く傷ついているように思えて、返す言葉が見つからない。
ただ見つめることしかできないでいると、一度膝に落ちた彼の瞳がゆっくり引き上がる。

見つめあう一瞬。ふっと表情を和らげた彼は、最後にこう付け足した。

「そんな簡単に騙されたら、本格的に行き遅れるな」
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