〜双子の憂鬱〜


ホテルのロビーで田辺にエスコートされ会場前まで行くと。



「社長!」



そこに居たのは、何時もより何倍も素敵な大河内だった。

目を見張る、その立ち姿。
濃いグレーのスーツ。
偶然にも胸ポケットに入れられたチーフの色がボルドーだった。



「ゆ・・・・・・う」


こちらを見て押し黙る。


あぁ、やっぱり似合わないんだ。


そう思って恥ずかしくて俯く。


あの時もそうだった。


キスをして、どうしたらいいのか分からず。黙ったままの大河内に対して自分は俯くことしか出来なかった。



「では僕は此処までで。社長、ちゃんと由有さんをエスコートしてあげてくださいよ。」


そっと背中を押され、一歩前に歩み出る。

目の前に大きな手が差し出され、条件反射で自分の手を重ねた。


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