LOVEPAIN③

「カット!!」


コウジロウさんのその声で、
またも、中途半端な所で撮影が中断する



実際、撮影中は監督であるコウジロウさんから細かい指示はよく入るが、
こうやって止められるのは一本目の撮影の時は全くなかった


なのに、本日だけで二度目



簡単な指示ならば、
カメラを回したままでもそのコウジロウさんの声は編集で切れるらしいが、
撮影を中断するって事は……



「広子ちゃん、気持ち入ってないでしょ?
よけいな事考えてない?

もっと真剣になってくれないと」


そのコウジロウさんの声は優しいが、
けっこうなお叱りを受ける



「――すみません。

ただ、さっき、ここで……」



私は言い訳するように、
コウジロウさんとカメラマンさんと音声さんに、つい先程の出来事を告げる



このバスルームで、居ないはずの女性の声がした、と




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