君の世界からわたしが消えても。

「高校に入っても、またこうやってみんなでここに来たいなあ……」


 中学3年、5月。


 まだ進級してから少ししか経っていないのに、そう言うミヅキの横顔は心なしか寂しそうに見えた。


 この時ばかりは、今にも消えてしまいそうなミヅキの儚い笑顔に、得体の知れない不安が過ぎったのを覚えている。


 その時の夕日に照らされたミヅキの顔は、高校2年生になったわたしの瞼に今も鮮明に焼きついたまま離れない。


「……いつでも会えるだろ。会おうと思えば」


 噛みしめるようにそう言ったイチの言葉も、耳にこびりついて離れないままだ。


「美月も葉月も、同じ高校? もしそうなら、また悪さするなよー? お前らの区別つくの、俺とイチだけなんだからさっ」


 ミヅキの肩を抱き寄せて言ったカナ。


 その顔は、照れているのか赤くなっていて。


 照れるなら抱き寄せたりなんかしなきゃいいのに……。


 そんなことを思いつつ、幸せそうに頬をピンク色にして微笑むミヅキを見れば、憤った気持ちは形になることなく消えていった。


 ふたりの恥ずかしそうな顔に、正直胸がきしんだけれど。


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