君の世界からわたしが消えても。

 こんなふうに自棄になっちゃうのは、八つ当たりなんだ。


 わたしはカナが好きなのに、カナはそんなわたしの存在を消してしまったから。


 その上、カナに愛されてるミヅキとして生きなくちゃならないって、どんな拷問なんだろうって話だ。


 カナがいくら愛おしそうな目でわたしを見たって、それはミヅキに向けられているもので、わたしのものには絶対ならない。


 本当に、カナはひどいよね。


 でも、だからってカナを見放すことはできないし、そんなことで嫌いになったりはできない。


 好きな気持ちは変わらない。


 ……わたしは欲張りだから、きっとミヅキも呆れているんだろうね。


 ミヅキには、一生勝てないよ。


 カナがわたしを好きになることなんかない。


 無情なこの状況の中、一時でもいいから幸せがほしいだけ。


 ミヅキとして生きること。


 それによって、わたしはカナの傍にいる権利を得られた。


 嬉しいと思ったのは確かだったよ。


 思えばそれは、最低でずるい考えだね。


 ミヅキとカナを傷つけてしまう、最低な考えだったよね。

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