夢見るきみへ、愛を込めて。


3年前は48キロだった体重が、43キロになっていた。

胃痛持ちだとか、あまり食に対する欲がないとか、理由は色々あるだろうけど、今は減ってしまった体重に悩まされている場合じゃない。


振り返りたい衝動を抑えながら早足で第一食堂を目指すと、待ち合わせていた翠(みどり)が『今週のおすすめ』と書かれた看板の近くで手を振っていた。


もう少し。あとちょっとの辛抱!


距離を縮めた私が立ち止まり、肩を落とせば、

「灯(あかり)、アンタ競歩の選手にでもなりたいの?」

翠は不思議そうに聞いてくる。

「な、なれるっ……と、思う……!?」

「その息切れっぷりじゃ無理だから諦めなさい」


呼吸が乱れたまま、昼時で騒がしい食堂に入る。心なしか足が重い。


「そういえば灯、週末ひま? バイト先の人と飲み会あるんだけど来れる?」


なぜ私が誘われるのかといえば、1年以上前まで翠と同じ古着屋で働いていたよしみだ。当時も親睦会だなんだと飲食店や居酒屋に連れて行かれることが多かった。


「うーん……週末は無理だー」

「土日どっちもバイト?」

「だね。終わるの0時過ぎるし」

「じゃあ厳しいか~」

「ごめんね」

「じゃあいつなら暇? 灯の代わりに入ってきた人とか、いまだに顔合わせてないじゃん? その友達とかも来るみたいだし。新鮮で楽しいと思うんだよね」


新鮮で楽しい、か。私の代わりに入った人って確か、同じ大学の1個上らしいけど……。
< 2 / 135 >

この作品をシェア

pagetop