いとし君へ
Episode 1

王様






「やっ…んああっ」

「もうイキそうなのかよ」



響く、卑猥な水音。

押し殺す、みだらな声。

漂う、熟れた空気と煙草の煙。



乱れる長い髪を眺めながら、しなやかな曲線を描く腰に置いた手に少しばかり力を込めて、俺はすべての欲情を解き放つ。

ヒクヒクと脈打つような締め付けが一層の充足感をもたらした。



「奏、エッチの時くらい煙草やめてよ」



再び煙草に火を点けると、つい今しがたまで俺の下で淫欲にまみれていた女が媚を売るような目でそう訴えてくる。



「お前さ、なんか勘違いしてねぇか?」


「…え?」

「もういいや、飽きた」


「ちょ、奏!?」



焦ったように俺を呼び止める声を最後まで聞くことなく、屋上のドアは錆びた音を無情に響かせた。





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