意気地なしの初恋
そして、渡部君は本当に毎日来て、退院まで後1日となった。
いつも通りの時間に来て喋っていた。
「明後日から学校来んの?」
「うん。出来ればそうしたいけど、2週間もいなかったから心配かな」
「大丈夫だよ!皆、優しい奴らだろ?」
「確かに、お見舞いに全員できてくれたこともあったもんね」
「大丈夫だから来いよ。」
「でも、何処か心配で」
「俺が一緒にいてやろっか?」
「えっ?」
「あっ。いやっ。お前がひとりになることはないと思うけどさ。もしな」
「じゃあ、もしそうなったらそうしてもらおう」
「おう」
私は、心があったくなって、自然と涙が出てきてしまった。
「…っひっ…」
「おい。どうしたんだよ」
「…っゴメン。急に」
そういった瞬間、渡部君は私を抱きしめてくれていた。
私が、泣き止むまで優しく。
その時、私は初恋をしてしまった。
< 14 / 41 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop