拾われた少女
「さぁ、次はお前の番だ」
無情にも男がじりじりと獲物を捕らえるように迫ってくる。
1歩1歩徐々に、だけど確実に差を縮めて…
怯える少女の反応を楽しんでいる。
そして、とうとう少女にむかって剣が振り落とされようとした瞬間、

″グラッ…″
「あっ…」

鈍い音と共に少女の立っていた地面が崩れ深い崖の底へといざなっていった。
「おい、あいつ落ちたぞっ!」
「ジェラルド様、少女は…」

「ふん、こんな場所から落ちたんだ即死だろ。
 引き上げるぞ、ここにいるとエストリアの奴 に見つかる……長居は無用だ。」
先頭に立ちジェラルドと呼ばれた男はそう言ってようやく手にしていた剣を鞘におさめた。
少女に対する同情や哀れみを見せることはなく、むしろ顔には安堵の表情が浮かんでいた。

白いマントを翻し、足早に去っていく男。
その胸元にはドクロをまいた蛇の紋章が金色に輝いていた。
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