ミステリークローズ
「あっ、これは失礼しました。私、本日から共に捜査を行う、森 綾乃と申します!えっと、苗字の『森』は、森林の『森』で、綾乃の『綾』は、綾錦の『綾』ですね。えっと、綾錦というのは、主に水中や湿地に生息する藻類の中の紅藻です。それで、綾乃の『乃』は、『乃(なんじ)』、えっと、氵に女の方ではなく、丿(へつ)の方です。あ、私の『乃』以外に『久』とかありますね。あ、えっと、矢田野 駿吾巡査ですよね?」




「え?あ、はあ…」



間髪入れずに喋っていたので、矢田野には少し状況が把握できていない。



「あ、えっと、質問の答えがまだ残ってますね。」



「え?」



「えっと、ここでは捜査をしています。」



「あの、ここは警察関係者以外立ち入り禁止なはずだけど?」



「あ、はい、私、刑事です。ほら。」



と、言いながら警察手帳を出した。



「え?ほんとだ…って、巡査部長!?」



「え?あ、ほんとだ…気付かなかった…」



(こんなやつが俺の上司……とうとう日本警察も終わったな…)



矢田野の頭の中では日本が終わっていた。



「では、これから宜しくお願いします。」



「へ?なんで?あんたが上司じゃないか…」



「いや、日本に帰ってきたのつい5日前だから、いろいろと教えてほしいですし…」



「帰ってきた?」



「はい。アメリカからつい5日前――」



「アメリカ!?」



矢田野は、森が話終わる前に驚いた。



「はい。アメリカのFBIに3週間前――」



「FBI!?」



「はい。アメリカで証人保護プログラムを――」



「しょ、証人保護プログラムを!?」



「はい。受けていました。」



「はあ…」



矢田野の頭の中で、日本警察が復活を遂げた。
と、その一瞬後、矢田野の頭に
(逆にFBIが終わっているのでは?)
と、いう考えが浮かんだ。



「やあ、矢田野君。もう自己紹介は終わったかね?」



そこに浅田警部がやってきた。



「あ、はい。終わりました。」



矢田野が答えた。



「じゃあ、FBI以前も?」



「あ、話しました。」



今度は森が答えた。




「じゃあ、証人保護プログラムのこともか?」



「はい。」



これは両方一緒だった。
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