Innocent Smile~ずっと一緒に~

『空気が読めない』という状況を教科書に載せられるとしたら、
まさにこういう状況のことを言うんだろう。

目の前の川原くんはニコニコと、ひとつも笑みを曇らせることなく笑っている。


全く……誰のせいでこんなにイラついてると思ってるんだか!


「佐那子さんって、美人って言われると怒っちゃうんですか?
珍しい人ですよねー?」


これって、バカにされてるよね? 絶対そうだよね?

イライラが、ふつふつと怒りに変わろうとしていた時……


「あ、俺……そろそろ行かなきゃ。」


彼がしていた腕時計を眺めて、おもむろにそう呟いた。


「今日のうちに、もっと……
佐那子さんと仲良くなりたいですけど、
まあ、明日から販促部に所属になれば、毎日一緒ですからねー。」


コイツにも一応、『仲良くしたい』なんて感情、あったんだ。
女の私をバカにしてるだけかと思った。


川原くんは席を立って手を振り、社食を出ていった。


全くもってして、意味がわからない。

一体、彼の頭の中はどうなってんのか……


『仕事』の『し』の字も見つからない。

会社に何しに来てるんだろうか……


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