タカラモノ~桜色の片道切符~

弱さと強さ

「ただいま」




返ってこないとわかっていても、誰かいるとなると思わず声をかけてしまう。




時刻は午前2時をすでに過ぎている。




静寂を壊さぬように理央は静かに扉をあけた。





外でマンションを見上げるとリビングの明かりが漏れていた。




疑問に思いながらリビングへと続く扉を開けるとソファーで丸まるように眠る美桜の姿があった。




「なんでまた……」




軽い身体を抱き上げて寝室へと連れて行く。




ベッドに寝かせると、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、一気に飲み干した。




冷たい水がアルコールで火照った体に染みていく。




キッチンカウンターには美桜が食べたと思われる器とペットボトル。




中身を見る限り殆ど食べていないといって言い量だ。



「食べろっていったのに」



精神的に追い詰められると食べられなくなるのだろうが、幾らなんでも少なすぎる



ため息を一つつくと、染み付いた女の香水(におい)を落とすため理央はバスルームへと向かった




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