僕
西さんの話
西のお父さん亡くなったらしいぞ！

もちろんだがそのメールに対する返信はなかった。

「もちろん」というのは僕が後になってからわかった事である。

土田とは中学からの付き合いだ。

小柄な男でよく喋る。

何を考えているかわからない所があるけど周りからは慕われていた。マスコット的な役割だったかもしれない。


昼休みに僕は土田と会った。

「土田、お前今日弁当か」

二色の乾いたパンを取り出し土田は答えた。

「これで十分」

奴の前に座り、僕は本題の端っこを切り出した。

「西のお父さん亡くなったらしいな」

少し土田の顔に変化が見られた。
「あぁ・・・そうらしいな」

「昨日西に会った？」

「いや」

さらなる本題へと僕は突き進む。
「つかさぁ、お前普通にメール返せよ」
少し砕けた感じで聞いてみた。


「メール？」

「西のお父さんのやつ」

間を置いて土田は答えた。
「あ～」
なにか土田は空と交信して止まり、突然こっちを見て言った。

「いや、あんなメールの内容に返せるわけないやろ」

・・・

「いやいや！俺はただ西んちに渡す金を集めるって。そう斉藤が言ったからお前も出すか聞いただけだって」

とっさに嘘をついた。
「ならそう言えって」

土田はしかめた顔で菓子パンの袋を開けた。
< 19 / 200 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop