愛してもいいですか



「で?お前はそこでウダウダと悩んでいるつもりか?」

「え?」



しゃがみ込んだままの俺に、神永さんは見下ろすようにして目の前に立つ。



「お前がそれでいいなら俺は構わないが、そのうち気付いたら社長も結婚してるかもしれないぞ」

「は!?結婚!?」



って、なんでいきなり!?

驚きの声をあげる俺に神永さんは風に髪をなびかせ、しれっと言う。



「英三社長の知人の息子との見合いの話が出ていてな、その話を持ちかけたら受けると了承した」

「見合い!?また神永さん、余計なことを……!」

「いいきっかけになるかもしれないと思ってな」

「きっかけ……?」



問いかければ、ふっと笑う眼鏡の向こうの瞳。



「社長自身の本音を聞くきっかけと、お前が必死になって気持ちを伝えるきっかけ、だ」



彼女と、俺。それぞれの、“きっかけ”……。



どうして彼女は、何も気付かずに今日もこうして俺を悩ませるんだろう。本当、仕事以外はてんでダメで、鈍くて、困る。

今までは、少しでも近くにいられればいいと思っていた。そのうち少しずつ、少しずつ、染めていければいいと。

だけど正直、もうそんな余裕はない。想いのままに、ぶつかるしかない。



怖くても、伝えるんだ。好きな人へ、好きだという気持ちを。



「……神永さん、その見合いの話詳しく教えて貰えませんか」



そう決めた俺の頭上には、澄み切った青空が広がっていた。






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