素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
「…………」


どうしよう。“まさか、そんなわけないでしょ?”って言おうか。今まで何度もしてきたように。でもなあ……


「あれ? 黙っちゃったって事は、本当にそうなのか?」

「……悪い?」


言っちゃった……

なぜか今回は、ごまかそうという気にならなかった。阿部和馬にバカにされるのは癪に障るけど、嘘はつきたくなかった。何て言うか、彼には本当の私を知ってほしい、みたいな……


「えっ? マジか?」


私はコクっと頷き、恥ずかしくて下を向いた。

自分でも本当に情けないのだけど、私はこの歳になるまで恋愛経験というものがない。ただの一度も。

当然ながら処女だし、キスでさえ、半年前に涼としたのが初めてだった。しかも、私からの不意打ちで。


「そっかあ。真琴ちゃんは真面目なんだなあ」

「そんなんじゃないよ」


真面目なんて事は決してない。涼の前にも好きな男の子は何人かいたし。告白する勇気がなかっただけだ。それに、男の子から告白された事もないし。要するに、モテないってだけの事。

それは、阿部和馬だって当然分かってるはずなのに、どうしてそれを言わないんだろう……

あ。それが彼の優しさかもしれない。ううん、きっとそう。

そう思った瞬間、私は顔を上げ、阿部和馬に向かって言った。


「処女を捨てたい」


と……

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