Candy House
思わず呟いたあたしに、
「鬼だって」

サラ金風の男はしゃがれた声でクスリと笑って、鬼に向かって言った。

「そんなこと言われたのは何年ぶりだろうな…」

鬼はくわえタバコのまま呟いた。

そう呟くと言うことは、今までの人生もあたし以外の人に“鬼”と言われたことがあるらしい。

…あ、そうだ!

危うく本来の目的を忘れるところだった。

「すみません。

あの、表の黒板に書いてあった『従業員募集』を見て入ったんですけど…」

そう言ったあたしの言葉をさえぎるように、
「採用」

しゃがれた声が言った。
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