手をのばす
・・・・・・この感覚はなんだろう。


言いたいことを言えず、押し黙る。

知っている、ずっと前から。


ああそうか。まるであの頃と同じなのか。

口を閉ざして、心を閉ざしていたあの頃と。


私は全然変わっていないということ?

変わったような気分になっていただけってこと?


沙耶と出会って、仲良くなって、親友になって、外見を変えて、仕事をしっかりこなして・・・・・・

沢渡を好きになって。


昔の私の影は、もうほとんどないはずだった。


ううん違う。気づかなかったふりをしていただけだ。


本当は、至るところであの頃の私が顔を出していた。

こんなこともあるよ、なんて自分をごまかして、結局何もできずにいた。

気持ちを行動や言葉で表す努力をしなかった。



愕然とする。

私はやっぱり私だった。



その事実だけが、私の前に嫣然と横たわっていることを知る。
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