休日

つんと服を引っ張ってみても起きる様子がないので、息を詰めてそっと手を伸ばした。
片手は背中、もう片方を膝裏に差し込んで抱き上げる。


思った以上に軽い小さな体は、くったりと弛緩したまま、健やかな寝息を立て続けている。

「ふぅー…」


詰めていた息を吐きだす。
起こしてはならないと、何故か必要以上に緊張していた。


「よっ…しょ、と」

抱き上げたときと同じくそっとベッドに横たえさせ、顔にかかった髪を払ってやる。

薄暗いながらも僅かに洩れてくる光が穏やかな寝顔をさらす。子どものようだ。


愛しさからのイタズラ心で頬を撫でてもつついても、ちっとも目を開ける気配がない。
触れる程度に唇を触れ合わせても、普段は真っ赤に染まるはずの頬も、潤む瞳も、今はなんの反応もしてくれない。

これはかなりの熟睡らしい。


ちょっとさみしいな。さっきのこの子もこんな気持ちだったのかもしれない。

夢うつつに聞こえていた、俺の名を呼ぶ声を思い出し、悪かったかと罪悪感を感じた。今日はとても久しぶりに、2人とも休日だった。
いくら眠かったとはいえ、せっかく家にまで来てくれたのに。


「…ごめん」

小さく謝ってみても、その子にはとても聞こえない声だった。

「…次は、つきあうから」


もう今日は、 また寝てしまおう。


腕の中の子が起きてびっくりするまで。


そっと、ぎゅっと抱き寄せて、さっきまでいた、でももっとあたたかくなった暗闇へと戻った。

< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop