一生に二度の初恋を『あなたへ』

・寒空の下で



う、さむっ……。冬の、風。


ボサボサになった髪の毛を必死に直して、わたしは凹凸のついた白い倉庫の壁に寄りかかる。



グラウンドの隅にある人目につきにくい体育用具の倉庫の裏。


わたしのいるところは日陰だから風通しが良く、余計に体感温度が低くなってる……気がする。


風で解けそうになった長いマフラーをもう一度巻き直して顔を疼くめた。



まだかな……?




ここは斎藤くん、瞬くん、結愛ちゃん、中曽根くんの元秘密の待ち合わせ場所。



瞬くん、中曽根くん、斎藤くんが陸上部の中でも人気ベスト5に入る三人だったことも、この案を提案したのが中曽根くんだったというこも後から知った。


そうじゃないと、ここまでしないよね。周りの嫉妬から結愛ちゃんという大事なお姫様を守るための場所なんか、作らない。



あの雨の……斎藤くんの家で勉強会した日もそこにわたしが参加して、ここで待ち合わせしたよね。


でも、もうわたしを含めた五人が集まることなんてない。斎藤くんを除いて四人だとしても、多分ないだろう。


隔たりが出来たわけじゃないけれど、わたしたちは確実に離れていってる。

ここ数ヶ月、斎藤くんがわたしたちを繋いでたんじゃないかと思うぐらい、糸が解けるように。

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