一生に二度の初恋を『あなたへ』
もうひとつ。
「ごめん。遅くなった」
「遅いよ……もぉ。今日は部活大丈夫だったんだ?」
「あるけど、明日テストだから自主練。
時間も時間だし唐突に聞くけど……話って…返事?」
瞬くんに告白されたこと。
「うん」
「沢山考えた。瞬くんといたらやっぱり楽しいし、瞬くんと付き合ったら大事にされて、幸せで、もっと毎日が楽しくて。そんな未来ばかり浮かぶ」
斎藤くんのこと、傷が癒えるまで待つって。
そういう幸せで、笑顔になれるような恋人同士が一番いいんじゃないの?って瞬くんも言ってた。
そうかもしれない。というか絶対そうだと思う。
「……けど、ごめんなさい」
わたしは一番良い恋をしたい訳じゃないんだ。
わたしの中に刻み込まれてるあの大きな初恋。
そのわたしの初恋の濃い色が、模様が、わたしから離れてくれない。
斎藤くんが好き、というこの気持ちはいつか消えるか…もしくはわたしが無理矢理消すかもしれない。
でも、わたしは斎藤くん以上に自分から好きになれる人が見つからない限り、どれだけ一緒にいても、本当の恋にはならないような気がするんだ。
中途半端でも、もしかしたら良いのかもしれない。けどわたしはそんな気持ちで付き合ったりはしたくない。