一生に二度の初恋を『あなたへ』


コーラが音をたてて床に溢れ落ち、小さな水たまりができている。



「俺、めっちゃかっこ悪い…」

「全然そんなことないよ‼︎わたしのために走ってきてくれたからこんな……」


床に膝をついて必死の思いで斎藤くんの制服を拭いた。


だって凄く嬉しかった。戻って来てくれるとは思ってなかったから。



「……」


何も言ってくれない…答えたくないほど怒って……るのかな。


慌ててわたしは動きを止めると、斉藤くんは横を向いて片手で口を押さえていた。


そしてわたしの視線に気づいたのか目が合うと、すぐにまた違う方向を向いてしまった。



えっと、もしかしてこれって。恥ずかしがってる…?



「顔…見ないで。びっくりして……と、ありがとな。

もう大丈夫だから、水道行ってくるわ」


「いっ、行ってらっしゃい……」



わたしは席にもう一度座った。


顔、赤くなってるの初めて見たな……。
頬がピンクに染まっているのは隠していても分かった。

斎藤くん、実は女の子に耐性が無かったり?


うーん…あんな顔見せられたら誰でもドキドキするよね。


急に体温が上がったみたいに、わたしの身体が熱い。

< 26 / 215 >

この作品をシェア

pagetop