カンナの花
3.白い泡と黒い水






木曜日。かんなとお茶の約束をした木曜日。

3限を終えて外に出ると真上から太陽が照りつけた。教習所に入校した、あの日に似ていると思った。

あの日はまだ彼のこと知らなかったな。

と思ってから、自分はまだ引きずっているのかとあきれた。

彼のことを考えたって何にもならない。もうしばらく連絡すら取ってないし、取る気もない。今は、たまにwahooのサイトで名前を目にするだけ。


「しまざき! お待たせ!」

「かんなおはよう」

黄色いワンピースにターコイズのサンダル。今日のかんなは南国風だった。

「行こう。こっち。」


うちの学生がよく行くコーヒー屋の2軒奥に、ひっそりと違うコーヒー屋があった。半地下になっていて、そこにあるとわかっていないとなかなか入りづらいような、そんなお店。わたしたちにはうってつけだった。


「トヤラ珈琲の裏にこんなとこあったなんて」

「ね。びっくりだよね。いいにおいしてたから気になったんだよねぇ。あ、注文ですか、はい決まりました。えぇと、うちは〜…そうですねぇ、何がオススメですか。そうですか、じゃあエスプレッソで」

何が決まりました、だ。おすすめなんか聞いちゃって、ノープランじゃねぇか、とつっこみたかったがこらえた。


「わたしはウインナコーヒーで」


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