psi 力ある者 愛の行方 


いつまでも怒っている私の背を押し、父はソファに座るよう促した。

興奮しすぎた私は、自分でも気がつかないうちに力を少し解放していた。

興奮と憤り。
力の為に感じる体への不愉快さ。
それが混ざり、更に心の中が掻き乱される。

けれど、そっと触れた父の手から私の中へと流れ込んできた感情は、切なさを纏った想いだった。

母親が早くから居ない私への申し訳ない気持ち。
祖母が亡くなってから、家の事を任せっきりにしてしまっている感謝の気持ち。
母親の愛を教えてあげたい温かい気持ち。
姉弟の居る楽しさをわかってもらいたい優しい気持ち。

なにより、家族四人幸せに暮らしたいと願う父の思い。

その感情がゆっくりと。
まるで温かいミルクを飲み込むように、滑らかに心の中へと流れてきた。

偶然読み取ってしまった父の心の中は、私を想う故の愛でいっぱいだった――――。


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