露店街魔法行路
歓楽街の小袋街道の奥を抜けると
お目当ての市に出る。
小さな露天がそこここにゴチャッと集まった
このあやしげな感じがぼくは好きなのだ。

協会外の魔法使いが作ったあやしげな品々や薬品。
出所がわからない廃棄品。
絶版ものの稀少本。廃盤になった音源鏡。
なじみの店主に挨拶をしつつ
かけ引きの交渉をするも
どうも此処一つ手にしたい品が見あたらない。

ぼくはウロウロと露天をめぐって
一つの露天の前で立ち止まった。
露天内にちょこんと座った少女が可愛かったからではなく
(・・・もちろんそれもあるけど)
「ロムストレムルの古道具店」と書かれた看板に
つよく引かれたのだ。
ロムストレムルと云えばあのロムストレムル?!。
知る人ぞ知るその名は
放浪者ムノーの著作「カクバトート見聞録」に出て来る
賢人ロムストレムルだ。

ぼくはまぁ、そんな事はなかろうと
「あのーおたずねしますけど・・・
このロムストレムルとは
あの賢人ロムストレムルと何か関係あるんですか?」
と少女にたずねた。

「あら。ご存知なのですか?」
「もちろん。わたしの祖父があのロムストレムルです」
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