チャンスの神はここにいる

「家まではゴメン送れないけど、近くの駅まで送る」
周りを見渡し私の腕を取って
彼は入って来た正面から出ようとしていた。

「ファンの子に見つかっちゃうよ」
さっきの女の子達とか
絶対出待ちしてるだろう。

「うーんどうかな。今から会場片付けて、掃除するのをファンの子達は知ってるから、俺達はまだ会場に残ってると思われてる。それに出待ちは裏口オンリーだし」

「掃除もするの?」

「そう。でも今日はしない。メグちゃんを駅まで送るから」
亮平君は軽く言って私を誘導。
忍者のように素早い動きで
コソコソと会場の出口をチェックし
人が出払ったのを確認して、私を無事会場から連れ出した。

「家まで送れなくてゴメン」

賑やかな街の表通り。

腕時計をチラ見して
亮平君は私にまた謝る。

「いいんだよ。亮平君だって忙しいでしょ」

申し訳なくて
足の動きを速くすると「競歩大会じゃないんだから」って笑われたから、私も笑って自然に戻す。

「打ち上げとかある?」

「うん。近くの居酒屋で2時間ほど出演者のダメ出し大会があって、その後に互いの褒め合いが1時間ほどあって、それが終わってから、純哉と反省会」

その
一番最後が
一番ハードそうなんですけど

「今日のライブはどうだった?」

「楽しかったよ」

駅までの道のり
並んでライブの会話をする。

他の出演者達のライブ感想。

純哉君の王子キャラが
私から見たら詐欺って話。

亮平君のネタで好きな箇所。

色々話をするけれど

私の心の中は
もどかしさでいっぱいだった。



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