チャンスの神はここにいる

「好きな子の笑顔っていいね」

繋いだ手を大きくブラブラさせ
亮平君は恥ずかしそうにつぶやいた。

「亮平君の笑った顔も好きだよ」

「……ありがとう」

帰りたくない

帰したくない

心の中で二人の声が重なってるけど

『エッチ禁止』
俺様大魔王が地獄の底で笑ってる。

繋がれた手に力が入り
亮平君は真面目な声を出す。

「絶対勝つから」

「うん」

亮平君と純哉君は
絶対勝つ!

大手事務所の若手になんか負けない。

塚本プロデューサーも太鼓判押してる
絶対売れる。

「俺さ、売れっ子になって仕事がめちゃめちゃ忙しくなって、メグちゃんに『私と仕事、どっちが大事?』って言わせたい」

「何よそれ」

真面目な雰囲気が崩れ
私は爆笑して亮平君の背中を叩く。

「痛い。いやマジ本気。そのくらい売れたい。今ならメグちゃんとデートしても『あれってグラビアアイドルのメグだよねー。隣の男って誰?』って言われる。メグちゃんに恥かかせたくない」

「私も売れてないから大丈夫だよ」

深く考えると悲しい会話だな。

「だから売れて、メグちゃんに言わせたい」

亮平君は急に肩を抱き
細い横道に入り

そっと
私の身体を抱きしめる。
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