チャンスの神はここにいる




ダルダルで事務所を出て
町の中を歩く。

都会の人混みの中
交差点を抜け
夕方だというのに午後の暑さを充電したような、アスファルトの熱を足元に感じながら私は歩く。

誰も振り返らない

誰にも見られない。

背中に『私グラドルです』って貼り紙でもしようか。

うつむいて歩くと
サンダルから見えるネイルが剥がれそう。

ドラッグストアでネイル買おうかな。

可愛いピンクが欲しい。
元気になるピンクがいい。

目的を持つと歩くのもまた楽し。
そこから五分
馴染みのマツキヨに飛び込んだ。

本当は高級デパートのコスメフロアで買いたいけど、ガマンガマン。

質より量。
今の私にはマツキヨが神。

気に入った色を見つけ
ついでに色々見ていたら

不審者発見。

その男は
生理用品の棚を真剣にジッと見つめている。

怖っ
男が生理用品って

変態?

でもどっかで見た事あるんだけど
どこだっけ。

じーっと目で追い

知らん顔して通り過ぎようとしたら
けっこう接近していたようで、彼の背中と私のバッグが接触してしまった。

「うわっすいません」
大きな声を出し
切羽詰まった顔で私に謝る男。

謝っている姿を見て
私は彼を思い出す。

スタジオの隅で相方に怒られていた
ツッコミ担当の人

新人お笑い芸人だ。



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