完璧上司は激甘主義!?
作り笑いを続けたまま南課長を見つめていると、南課長は特に驚きも動揺もする様子を見せることなく、淡々と答えてくれた。

「そうだな。あいつが待っているだろうから、もう帰らないと」

「――え?」

あいつ……?
それって“ショーコさん”のこと??

あっさりと答えてくれたことに動揺してしまい、うまく言葉が出てきてくれない。
その間にも南課長は帰り支度を進めている。

「いいか、新。また今度来た時にはこの状態を保っていろよ?」

「あ……南課長!」

鞄を持ち、玄関へと向かっていく南課長の後を追い掛ける。

まだ帰らないで欲しい。
ちゃんと聞きたいよ。ショーコさんのことを。
あいつってショーコさんのことなんでしょ?それじゃ南課長はショーコさんと一緒に住んでいるってことなの?

「じゃあな。……研修、頑張れよ」

「あ……っ!」

一方的に別れを告げ、さっさと出て行ってしまった南課長。
玄関のドアが閉まる音が虚しく響き渡る。

「……やっぱりそうだったんだ」

ショーコさんの名前を耳にしたときから覚悟はしていたけれど、まさかあんなにあっさりと認めてしまうなんて。

でもそれだけ南課長は、ショーコさんのことを想っているのかもしれない。


好きって気持ちは消えそうにない。
なのに、相手には大切な人がいる。……この恋の成就方法ってあるのかな?

しばらくの間、玄関先で立ち尽くしてしまっていた。
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