完璧上司は激甘主義!?
「この前、ちょっと書類にシミをつけちゃったくらいで、すっごい怒られたし」

「私なんか、置く場所で文句言われたよ!『どうしてパソコンの近くに置くんだ』って」

「うっわ!最悪!あっ、それとこんなこともあった!廊下ですれ違いざまに、顔が潔癖上司の肩に触れちゃってさ~。その時の顔と言ったら、酷いのなんのって……。新さんにも見せてあげたかったよ~」

仲間意識を向上させるためなのか、やたらと話題を振ってくるふたり。
そんなに“アンチ南課長”を増員させたいのだろうか?
でもここで否定しても、職場で居場所がなくなるだけ。だから私は決まって仕方なく嘘をつく。

「それは是非見たかったな」

そう言うとさらにふたりの話は続いていき、少しの間、相槌を打ちながら聞き流していた。



「つっ、疲れた……」

二十時過ぎ。
電車に揺られ、やっと我が家に帰宅。
都心部から少しだけ離れた場所にあり、五階建ての三階にあるのが私のマイホーム。
1LⅮDkの間取りの部屋。
玄関の鍵をかけ、暗い室内の電気を点けると、明るい電灯によって映し出されたもの。
それはこの汚部屋。
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