私は彼に愛されているらしい
「今日彼は何してんの?」

「んー?さあ、どうかな。多分家にいると思うけど。」

「じゃあ今から行ってきなよ。」

その瞬間、必要以上の量が喉に押し込まれて私は息が詰まりそうになった。

「うっ…うえ!?今から!?」

「そ。今日は居酒屋でも行ってオールコースにしようかと思ってたけど延期にする。もやもやするなら彼氏に直接会って言えばいいじゃない。さん付けやめてって。」

おしぼりを差し出してくれる優しさを受け止めながら私は信じられない提案に目も口も大きく開いて完全に混乱中。

「うん、20時。別に悪くない時間でしょ。」

そう言うなり荷物をまとめ始めてさらりと伝票を手にして立ち上がる。

「いや、ちょっと。」

「次はみちるの驕りってことで。またねー。」

「ちょっ…佳代!」

背を向けたまま手を振るだけで佳代はそのまま会計の方へと向かって行ってしまった。

なんて行動派なの、佳代さん凄すぎる。

っていうか、奢ってもらった立場になる私は佳代の言ってたことを実行しなきゃいけなくなったってことよね。

「いやー…ちょっと厳しー…。」

表情を変えないまま囁く声で本音を漏らしてしまった。

時刻は20時を過ぎたところ、アカツキくんはきっと家にいると思う。

そう考えただけで私の視線は重力に導かれるように下へと向かった。

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