私は彼に愛されているらしい
「赤の部分に修正を入れて下さい。正しい図面はこれです。手描きで見えにくいところがあると思うので、いつでも聞いてください。青は修正済みなのでそのままでお願いします。」

竹内くんの説明は耳に入っている。言われている内容もちゃんと理解して相槌も打っている。

でも感情はドロドロだ。わざと間違ってやろうかと思う位にドロドロなの!

誘ったのは竹内くんでしょ?

お店の予約もするってプレッシャーまでかけたくせに。

最後に念を押してきたくせに。

「提出が月曜の朝イチなのでデータは今日中に送ります。上司承認もいるので今日じゃないと駄目なんですよ。…すみません、金曜日なのに。何か約束とかありましたよね?」

はあ?

思わず大きな声が出そうなところを私はなんとか我慢して口を開けただけに留めた。偉いぞ、私。社会人だもの、その辺はきちんとしていないとね。

「…ううん。特に大切な用事はないから大丈夫よ。」

営業用の笑顔を張り付けて短く首を横に振る。こんな会話になるくらいだもの、きっともう仕事の説明は終わった筈だ。

私は手描き図面と説明に使った大きな図面を手にしてその場から去り端末に向かった。

その時の顔は壮絶だ、だって明らかに私は不機嫌この上ないんだから。

何か約束とかありましたよね?ありましたとも、一方的に押しつけられた強引な約束が!

忘れたの?からかっただけ?


「…振り回された分、ちゃんとお返ししますからね。」


これがそのお返しだっていうの?丸2日散々私を悩ませることが?


「俺、清水さんのことが好きなんですよ。」


あれも嘘だったんだ。だとしたら酷い。なんでこんな仕打ちを受けないといけないんだろう。

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