私は彼に愛されているらしい
切り出しを待っていた俺の願いどおりに片桐さんはすぐに話を始めてくれた。やりやすい人で助かるなと思いながらも、その言葉の先が気になって仕方ない。

「実際2人ってどうなってんのかなと思ってさ。」

「そうですね。僕たちの間では具体的な話は出てきていないんですけど…、清水さんから何か聞いてたりしますか?」

会議スペースからここに来るまでの間ずっと考えていたことだった。

付き合い始めてから3か月は経つ、周りの認知度も高くなりからかうことも飽きて落ち着いてきた頃だ。でも片桐さんに言ったように、2人の間で結婚という言葉が出てきたことは一度もない。

デリケートな話だし、職場でも特に2人が近い場所にいることから男だけをからかうというのも難しくて周りも気を遣ってくれていた。

一番に言いそうな片桐さんはそこのところの常識はあるようで、女性に対して結婚の話は一切しない。だから俺に対しても表立っては言って来ない。

付き合い始めた頃にチーム内の飲み会で散々からかわれた時に言われたが、それでも職場では一切そんな話はされなかった。これだけ近いと別れた時に大変だという思いもあるからだろうなと冷静に分析して気にしない素振りをする。

まあ、相変わらず飲み会の度にからかわれるけどそれは覚悟の上だから気にならなかった。

申し訳ないが周りの盛り上がりとは別に、結婚について2人で話したことなんて全くなかったんだ。でも口で言う割にはそんなに関心が高くないことも知ってるけどね、一応愛されている清水さんの手前謝っておこう。

すみません、まだこれからなんですって。

でもやっぱり…片桐さんは気になるよな。

「いや、これは東芝さんからの情報なんだけどな。」

「東芝さん?」

「隣の室のエースだ。清水さんが一緒に飯食ってる2人いるだろ?若い子の方の教育係をしてる人。」

「勿論、東芝さんのことは知ってますよ。」

東芝さんは有名な人だ。

< 74 / 138 >

この作品をシェア

pagetop