初恋はカフェ・ラテ色
私が一方的に洋輔さんを好きなだけ。

「好き」と言ってもいつもはぐらかされてしまっている。

30歳と22歳……その年の差8歳。

洋輔さんには私が妹のようにしか見えていないみたい。

それでも私は洋輔さんが好きだった。

頻繁に会いに行く自分がストーカーにでもなったような気分だったけれど、会いたい衝動を抑えられなかった。

毎日通っても洋輔さんは嫌な顔をせずに接してくれるからつい行ってしまうのだ。

妹のように思われているのが、年を重ねていくごとに切なくなっていく。

「あっ! いけないっ。行かなきゃっ」

机の上のバッグを持つと、階下に降りた。

「行ってきまーす」と居間にいる両親と順平さんに声をかけて玄関を出る。

商店街の入り口に位置する自宅兼店舗の『柴田屋』から駅までは直線で100メートル。

駅に向かって歩いていると、八百屋のおじさんや惣菜屋のおばさん、ラーメン店や蕎麦屋のご主人などが「おはよう」と声をかけてくれる。

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