初恋はカフェ・ラテ色
それからの洋輔さんは忙しくて、気を使わせないように私は絵を描きはじめた。

仕事をしている洋輔さんの側に居て見ているだけで満足なのだ。

時々、描く手を止めて洋輔さんを見る。それの繰り返しを私は楽しんでいた。

休憩時間はスタッフが交代で取っている。洋輔さんの休憩になり、私を外に連れ出してくれた。

近所のお寿司屋さんに入ると、『カフェ・グラン・ロッソ』の常連さんのおじいさんたちに会う。

洋輔さんは私を先に座らせてからカウンターに座っているおじいさんたちに挨拶しに行く。

お店をやっているから近所だと知っている人に会って、洋輔さんは気を使って大変なんだろうな。

洋輔さんの部屋でも良かったのにな……そうしたら……。

ちょっとよこしまな考えも脳裏によぎり、ふるふると顔を横に振る。

「クスッ。心春、頭を振ってどうしたんだい?」
「え? あ、ううん。な、なんでもないよ」

戻ってきた洋輔さんに、よこしまな考えを振り払おうとするところを見られていたようだ。

顔が急激に熱くなって、慌ててメニューに視線を落とす。

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