初恋はカフェ・ラテ色
「一通りそろえてあるよ。一応一人暮らしは長いからね」
「あー! そうだったね! 私より洋輔さんの方が絶対に美味しいよね」

洋輔さんは自炊をしていた人、私はお母さんに作ってもらっていた人……。

ご飯を作りたいと思ったけれど、恥をさらしてしまうかも。

「どんな料理でもいいから。無理をしない程度に頑張って」
「はい!」

大事なカギをバッグのポケットにしまい立ち上がった。

出口に向かうと、空いたグラスや食器をトレーに乗せた太一とばったり出くわす。

「帰るのか?」
「うん。お疲れ様~ じゃあね~」

今の私はお父さんのことを忘れるぐらい嬉しくて、顔をものすごく緩ませている。

「うへっ、機嫌が良すぎて気持ち悪いな」
「いいの。いいの。じゃあね~」
「変な奴」

太一に軽く手を振り、すぐ近くにいた奈々さんに頭を下げるとカフェを出た。

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