初恋はカフェ・ラテ色
お父さんはそっぽを向きながら私たちを見ようともしなかったけれど、気持ちはわかっている。

あれほど怒り、結局許した自分が恥ずかしく気まずいのだ。

「ありがとうございます!」

洋輔さんはもう一度深く頭を下げた。

「お父さんっ! ありがとう! お祖母ちゃん、ありがとう! お母さん、ありがとう!」

洋輔さんと結婚出来る! 心の中にじんわりと染みてきて、現実なんだと思うと嬉しくて涙が出てきた。

「心春は泣き虫だねぇ。今日は当分出ないくらい泣いただろう?」
「泣いたのかい?」

洋輔さんはハンカチで私の涙を拭きながら瞳を陰らせる。

「……少しだけ。お祖母ちゃんと話をしていたら涙腺が緩んじゃった」

お祖母ちゃんは私たちを見てうんうん頷いてからお母さんに目配せする。

「それじゃあ、酒でも酌み交わそうじゃないか。心春がめでたく結婚するんだ。治夫、今日は飲むよ」

お祖母ちゃんはお父さんほどじゃないけれど、お酒に強い。

一緒に付き合わされる洋輔さんが気になる。

そういえば、洋輔さんがお酒をたくさん飲んだところを見たことがない。

「心春、ここはお祖母ちゃんに任せて、おつまみの用意手伝って」
「あ、はい」

お父さんと洋輔さんが2人きりだったらすごく不安だけど、お祖母ちゃんがいてくれるから安心して席を立った。

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