初恋はカフェ・ラテ色
振袖は嫌だとごねたのち、それなら結婚式に出席させないと脅されて、しぶしぶド派手な振袖を着ることになったのだった。

嫌々着ていた振袖を褒めてくれたのが洋輔さんだった。

チャペルでの挙式が終わると、皆が一斉に披露宴会場に向かう。

慣れない草履が毛足の長い絨毯に突っかかって転びそうになった。

ぶざまに転びそうになりぎゅっと目をつぶったとき、誰かに腰の辺りを支えられた。

転ばずにホッとして顔を上げると、チャペルの参列席の並びにいた人だった。

あまりにもカッコよくて、桜子ちゃんの挙式に感激するどころか、通路を挟んで座る洋輔さんをちらちら見てしまった。

14歳の自分には周りにはいない大人のお兄さんの雰囲気で、目が離せなかった。
 
それが私の初めての一目ぼれだった。

支えてくれたときに「大丈夫?」と優しく聞いてくれて、それから「日本人形みたいにきれいだね」と言われた。

その頃の私の髪はあごのラインでそろえたボブ。まっすぐな髪質でサラサラだった。

でも私の初恋はしばらくお預けになった。

なぜなら大学を卒業したばかりの洋輔さんは兄の結婚式に出席した後、4月の初めに2年間バリスタの勉強をするためにイタリアへ飛んでしまったから。



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