初恋はカフェ・ラテ色
イタリアから戻ってくると、我が家から2駅先に『カフェ・グラン・ロッソ』をオープンさせた。

洋輔さんがイタリアから戻ってきたのは、私が高校2年生の5月だった。

桜子ちゃんはご主人のご両親と同居していて、イタリアから洋輔さんが帰国しホームパーティーを開くからいらっしゃいと誘われて花束とたくさんの和菓子をお母さんに用意されて出かけた。

洋輔さんの実家は都内の山の手と言われる閑静な住宅地にある。周りの家は大きく洋風な建物ばかり。古めかしい日本建築の我が家とは正反対だ。

門は白で塗られた鉄柵。

この先に洋輔さんがいると思うと、思春期の私の胸はドキドキと張り裂けんばかりで、インターホンを押す手が震えたのを覚えている。

出てくれたのは桜子ちゃんで、私の到着を今か今かと待っていてくれたみたいだった。

部屋の中へ案内された私はあんぐりと口を開けっぱなしだった。

見るものすべてが我が家と違う。明るいリビングにテレビや絵本でしか見たことがない白い階段。おまけに白いグランドピアノまである。誰が弾くのだろうか。

下町育ちの私はこんなふうに生活する人を初めて見た日だった。

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