ETERNAL〜また逢える〜
久しぶりの再会

「ありがとうございました。わざわざ遠くまで送って申し訳ありません。でも、とても楽しくて、気分が晴れました。」


私、北条真美(ほうじょう まみ)は、ベッタベタの足周りのスポーツカーの助手席のドアを気をつけて開ける。
こういった車は、気をつけて開けないと歩道の段差とかでドアの下を擦ってしまったりするからだ。

「こちらこそ、ありがとう。楽しかった。またね。」

柳田翔(やなぎだ しょう)先輩は、これが、いつもの事のように、そして、約束をしていなくても、また必ず会う恋人かのように、さらっとそう言った。

後部座席から親友の朱美(あけみ)が出てきて助手席に乗り込む時に私に言う。

「お疲れ様。じゃ、また。」

……朱美…恋人でも無いのに、当たり前のように助手席に乗るなぁ。
ほんと、そういうこと気にしないタイプだよね…

遠ざかって行く車を見送りながら、そんな事を考えていた。


今日は、何だか不思議な一日だった。

朱美と私は、幼なじみ。
柳田先輩は、中学時代の部活の先輩だった。
私達3人の出逢いは、小学生の時だ。
私と、幼なじみの朱美は、一緒に剣道の道場に通い始めた。
その時、二つ年上の柳田先輩は、既に道場に在籍していた。

柳田先輩は、剣道の腕はイマイチだったが、道場には真面目に通っていた。
でも、中学の頃、根は優しい人だけど、何処か陰をもったヤンキーであり、剣道部員でもあった。

ヤンキーではあるが、つるむタイプでは無かったようで、一匹狼ながらも、一目置かれる人だった。

割と社交的な朱美は、すぐに柳田先輩とも仲良くなった。
でも、私は人見知りなタイプで、柳田先輩とは直接話しをしたことも無く、でも何故か朱美を通じて、お互いの関係が保たれている。
そんな間柄だった。

朱美はその頃から柳田先輩の事が好きだったようだ。
私にハッキリとそう言った事は無いが、幼なじみの私から見たら、朱美の気持ちは分かり易過ぎた。

しかし、残念ながら、今の今まで、柳田先輩の気持ちは、朱美に向くことは無かった。
こうして仲良く遊んでいても、柳田先輩には、常に彼女の存在があった。
私は、そんなに親しくもない柳田先輩の彼女には会った事は無かったが、朱美は何度か会った事があるらしい。

実は、3人で会う事は、ものすごく久しぶりのことだった。
中学…そう、中学以来だ。
朱美とは頻繁に会っていたが、柳田先輩の近況は朱美から常に報告は受けていたものの、会ったのは中学以来だったのだ。

突然の流れだった。
私は大学を卒業し、就職したばかりで、かなりまいっていた。
ほぼプライバシー無しの会社の寮生活。
慣れない仕事。
そんな日々で元気の無かった私に、朱美は、
「今から柳田先輩と会うから、来ない?」
そう電話してきた。
いつもの私なら、断っていただろう。
でも、その日は気が滅入ってたのもあって、二つ返事で了承した。

中学以来の柳田先輩は、私の中では、初対面の人、同様だった。
だけど、柳田先輩はとても優しくしてくれた。
ゲームセンターで一緒にゲームをしたり、プリクラを撮ったり…。
帰る頃には、苦手意識を持っていた柳田先輩の優しくて、紳士的な態度に、今まで偏見を持っていた自分を恥ずかしく思った。

……これじゃ、朱美は夢中になるはずだわ……。

柳田先輩は、よく観てみると、とても美形だった。
整った顔立ちに、わりと白めの肌。
茶色の瞳。ふわっとした笑顔。
間違いなく、多くの女性をポーッとさせてしまうオーラがある。

そこまで素敵な男性だ、と気がついても、どこか冷静に観ている自分がおかしかった。




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