ブンベツ【完】
おじさんが作ったお蕎麦は安定の美味しさだった。
こんなに美味しいのにお昼時なのにも関わらず店内は私たちしかいないってことはやっぱり、カイさん曰く “ おっかない ” のかもしれない。
でも絶対悪い人じゃないんだと思う。
表情が硬いだけで、こんなに美味しいお蕎麦を作ってるんだから中身はすごく優しそうな感じがする。
出来上がったお蕎麦を黙々と食べ続ける私達には見向きもせず、少し離れたとこに椅子に座って新聞を開いてる。
お蕎麦を食べ終わって一息つく中、度々めくられる新聞の音を聞いていると。
「あぁ、思い出したよ。サジ坊の言う “ハナ” っつー嬢さんはおめぇさんか」
こっちは向いてないものの、それは明らかに私に向けての言葉。
新聞を読んでるために表情が見えないこともあっていきなりの不意打ちだった。
だから「あ、え、は、はい。そうです…」と明らかに動揺してる様子が出てしまった。
「思ったよりずっと見た目が賢そうだ。もっと頭のオカシイ奴だと思ってたんだよ」
「あ、いや…あの、いつもお蕎麦ありがとう、ございます。すごく美味しいです」
どうしていいのか分からずカイさんに視線を向けてみると「相手にしなくていい」と言うように首を振る。
だけど更にどうしていいのか分からなくなった。